膵炎とは~急性膵炎と慢性膵炎の原因・症状・治療

膵炎という、静かで恐ろしい病気。過度の飲酒にご注意を。

膵炎の概要~急性膵炎・慢性膵炎とも、原因の中心はアルコール過剰摂取

皆さんは最近増加傾向にある「膵炎(すいえん)」という病気について、ご存知でしょうか?

いや、それ以前に「膵臓(すいぞう)」という臓器については、どれくらいご存知でしょうか。


膵臓は、場所としては胃のちょうど裏側あたりにあります(膵臓(Wikipedia))。

膵臓は病気になったとしても自覚症状の出にくい、CT検査等でも異常の見つかりにくいやっかいな臓器ですが、人の生命維持活動においてその果たす役割は、極めて重要です。膵臓無しでは、人は生きていられないのです。


膵臓は直径15cm・重さ100g程とサイズこそ小さいですが、血糖値を正常に保つためのインシュリンなどのホルモンを分泌する「内分泌機能」、そしてアミラーゼやリパーゼなどの消化液を分泌する「外分泌機能」という、重要な2つの機能を持っています。

膵臓が出すアルカリ性の消化液が、「膵液(すいえき)」です。1日に1,500mlもの膵液が、食事時を中心に大量に分泌されます。

たんぱく質・脂質・糖質を分解する酵素を含んだ「膵液」は、胃酸の洗礼を経て酸性となった内容物を小腸で中和します。

3大栄養素のすべてを分解する消化酵素を含んだ膵液を分泌している膵臓は、まさしく消化の主役と言えるでしょう。


私たちは食べ物を、そのまま体内に取り込んでいるわけではありません。消化酵素が活発にはたらく消化活動を通じて、栄養素を細胞膜を通れるほどの大きさの分子レベルにまで分解し、消化管から吸収しています。消化液のひとつである膵液は、そのための不可欠な役割を果たしているのです。


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膵炎とは、この膵臓に炎症が起き、痛みなどを生じる病気です。


膵炎は、膵臓が分泌した酵素によって膵臓自らの細胞が消化され、炎症を起こしてしまうという、病気としてもちょっと変わった特徴を持っています。

一般に膵炎の痛みは食事によって強まり、絶食することで軽くなりますが、これは食事をしたときの消化液で自らの膵臓が消化され、ダメージを受けることによるものです。


厚生労働省の調査研究班による2011年度の調査では、1年間の推定患者数は急性膵炎が約63,000人、慢性膵炎が約67,000人。急性膵炎・慢性膵炎ともに、患者数は年々増加傾向にあります。

男性の急性膵炎の発生頻度は女性の約2倍ですが、膵炎の発生リスクそのものに性差は無いとされます。


膵炎の原因は急性膵炎・慢性膵炎とも「アルコールの過剰摂取」によるものが最も多いものの、胆石症遺伝に起因するものや、原因不明とされる「特発性膵炎(とくはつせいすいえん)」もあります。


これら以外にも、最近は自己免疫機能の異常により膵臓が慢性的炎症を起こす「自己免疫性膵炎」が、特に60~70歳代の高齢者男性に患者が増え注目されています。


急性膵炎は比較的若い30~40代から発症が見られますが、慢性膵炎主に50~60代に多く見られます。


アルコール摂取による急性膵炎の割合は男性で4割強、女性で1割。同じく慢性膵炎においては、男性が7割強女性は3割弱となっています。

いずれにせよ日本では男女とも、アルコール性膵炎の患者が増加傾向にあることは確かです。

膵炎 アルコール性膵炎


急性膵炎・慢性膵炎とも、お酒の飲み過ぎ、すなわち「アルコールの過剰摂取」によって起きるケースが多いという点で共通しています。

一般に「アルコール性膵炎」とは、「アルコールの過剰摂取によって発症する急性膵炎」を指します。

ただしその定義は確立されたものではなく、慢性膵炎もまた、アルコールを原因とするものが過半を占めています(アルコール性慢性膵炎)。


ちなみに、アルコールの過剰摂取によってなぜ慢性膵炎が起きるのかについてはまだよくわかっていませんが、アルコールだけでなく遺伝・喫煙・食生活などアルコール以外の他の要因も関係しているものと考えられています。しかしいずれにせよ、大量飲酒が膵炎を招くリスクを高めることは確かです。


日本酒にして毎日3号の以上のアルコールを10年以上摂取し続けると、慢性膵炎になりやすいと言われており、「アルコール性肝炎」と同様に酒飲みが用心しなくてはならない、怖い病気のひとつと言えます。


しかしその一方、アルコール性膵炎では必ずしも「大量の」飲酒が原因ともされていないことにも注意が必要です。

比較的少量の摂取でもなる場合がありますし、逆に長期間多く飲酒している人でもならないケースもあって、発症するかどうかは個人差が大きいと言えます。


またアルコール性の慢性膵炎の場合は、発症から膵臓機能の破壊に至るまでが速く、非アルコール性の半分ほどの歳月で同程度に進行すると言われます。

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急性膵炎と慢性膵炎の症状~慢性膵炎は糖尿病の合併症も

急性膵炎腹部や背中が痛くなるのが一番の症状で、激痛と言っていいくらいに痛みが激しくなることもあります。該当部を手で押すと、さらに一層の痛みを感じます。


市販の鎮静剤やお酒を飲んで痛みをごまかそうとする人もいますが、すぐには効きませんし、痛さが続くあまり高熱が出たり、あるいはショック症状を起こす場合もあります。急性膵炎は軽く考えずに、病院できちんと治療を受ける必要がある病気なのです。

軽症の急性膵炎の場合、治療により通常は数日~一週間程度で症状も収まり、治癒します。


ただし万一、急性膵炎をきっかけとして、胃・肺・腎臓・腸など全身の臓器が複合的に炎症を起こす「多臓器不全」となった場合は大変で、重症の急性膵炎の死亡率は5割を超えるともいわれます。この場合は集中治療室入り、胆のうや膵臓の手術ともなりかねません。


慢性膵炎は基本的に、急性膵炎とは別のメカニズムで起こる病気と考えられています。ただし急性膵炎から慢性膵炎への移行(慢性化)は存在し、その移行率は平均して10%前後とされています。


慢性膵炎では、膵臓の消化機能が破壊されて元に戻らなくなります。そして「内分泌機能」が壊れることにより、「糖尿病」を合併しやすくなります。


糖尿病の発症に関わるインシュリンは、膵臓から分泌されるホルモンで血糖値を下げる働きをしています。

このインシュリンが十分に分泌されなかったり、あるいは正常に働かなくなると血糖値が上がり、やがて糖尿病が引き起こされます。

いったん発症させてしまうと一生涯つき合わねばならず、また糖尿病網膜症・神経障害・動脈硬化などの合併症を絶えず心配しなくてはならない、「糖尿病に至るための最短コースのひとつ」が慢性膵炎なのです。


慢性膵炎も急性膵炎ほどの激痛ではないものの、症状として腹の上側あるいは背中辺りに、重苦しく鈍い痛みが続きます。

それ以外に、吐き気や食欲不振・体重減少などの症状がみられることもあります。


もっとも慢性膵炎が重度まで進行すると、膵臓の損傷が進み、痛みをあまり感じなくなるとされます。

重度の慢性膵炎は上腹部を抑えると、固くなった膵臓の感触を外から確認できるほどになります。

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急性膵炎と慢性膵炎の治療~絶食・絶飲、アルコールは厳禁

急性膵炎 慢性膵炎


膵炎の検査は、血液検査や腹部超音波検査、CT画像検査など幾つかの方法で行われます。


今日においても重症の急性膵炎の死亡率は5人に1人と高いままであり、また多くの患者が脱水によるショックや多臓器不全により、発症から2週間以内に死亡しています。

したがって軽症か重症かの判断は、発症・入院から48~72時間以内に、専用のスコアリングシステムを用いて慎重に行われています。

とりわけ重症の急性膵炎では、厳密な呼吸・循環管理および輸液(点滴)治療に加えて、感染症の予防や合併症にかかわる対策も必要になるためです。


治療ですが、急性膵炎の場合は入院後はきちんと絶食・絶飲したうえで、点滴で栄養分や水分を補いながら安静を保ち、必要に応じて鎮痛剤や抗酵素剤を投与するのが基本となります。

食事によって消化酵素の分泌が促進されるため、それを防ぐべく、絶食する必要があるわけです。なお当然のことながら、禁酒は絶対条件です。

絶飲食の期間は病状にもよりますが10日間前後重症の場合は1ヶ月近く経口摂取が許されないケースもあります。


急性膵炎は治る見込みの高い病気ですが、飲酒を続ける限り、再発のリスクも高まります

厚生労働省の追跡調査(2004年度)によると、アルコール性急性膵炎の再発率は32%、飲酒を続けた場合の再発率は57%と、高い数値を示しています。

また海外ではアルコール性急性膵炎の80%が、罹患から4年以内に再発しているとの研究結果もあります。


注意すべきは、急性膵炎では痛みなどの症状が和らぐと自己判断で飲酒を再開してしまう人がとても多く、「再発」や「慢性化」が起きやすいことです。

その意味で急性膵炎はむしろ、「回復した後の自己管理能力が問われる病気」でもあります。治った後は、将来を考えて禁酒したほうが無難でしょう。


慢性膵炎は臓器の傷んだ部分は壊死(えし)して二度と回復しないため、病気の進行を抑えることに主眼が置かれます。


特に慢性膵炎の場合、飲酒の禁止が「絶対的に」要求されています。また通常は食事においても、脂肪の摂取制限がなされます。

鎮痛剤や抗酵素剤などの薬物治療も併用される場合もあり、また万一重度化した場合は、集中治療室入りないし手術の可能性もでてきます。



結論として、急性膵炎を甘く見ないこと、また慢性膵炎では糖尿病など合併症の発症の恐ろしさを認識し、禁酒した上で食事内容の見直しを行うなど、生活習慣の改善にも取り組む必要があります。


膵炎は特に「他の病気と間違われることが多い」ので、上記の症状に思い当たる場合は鎮静剤などでごまかさず、早々に消化器科の診察を受けましょう。



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参考サイト



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